宮沢賢治『やまなし』のクラムボンとは何か
優しい雰囲気の絵本
久しぶりに、夫が図書館から絵本をかりてきました。
ミキハウスのほんわか表紙です。
カニの兄弟の会話から
カニの兄弟が話しています。
「クラムボンはかぷかぷわらったよ」
「それならなぜクラムボンはわらったの」
「知らない」
魚が一匹、カニの頭の上を通ります。
「クラムボンは死んでしまったよ………」
「クラムボンは殺されたよ」
「それならなぜ殺された?」
(中略)
「わからない」
ここで、すぐに子どもに「クラムボンってなに?」と聞かれます。
皆さんは、何だと思いますか?
「クラムボン」は何か子どもと意見の出し合いっこ
何かはっきりわかっていない(絵本の解説にそう書いてあります)から、最後まで読んでから考えてみようと言って、最後まで読んで、お互いの意見を出し合いました。
子どもは「光だよ」といいました。
「光は屈折していろんな風に見えるんだよ」と。
私はぼんやりみんなの心の中にある神様のような存在かなぁなんて思いながら、プランクトン説を思い出しました。
「プランクトンだと思うな!お魚が通り過ぎた時に殺されたって言っているから、食べられたんじゃないかな」
でも、プランクトンが「かぷかぷわらった」ってカニの子、プランクトンの表情までわかるんでしょうか。
過去の研究でいろんな説がある
最初、子どもと読んだ時はすっかり忘れていましたが、国語の授業で取り上げられる題材です。
宮沢賢治の「やまなし」に関する研究をまとめたサイトを拝読しました。
「クラムボン」とは何か。おおよそ9つの説があるようです。
1、アメンボ説(昭和14〜43年)
2、小生物(プランクトンや川えびなど)説(昭和46年)
3、蟹の吐く泡説(昭和?年〜現在)
4、光説(昭和?年〜現在)
5、crabからの連想説(昭和54年〜現在)
6、蟹の母親説(昭和?年)
7、蟹語説(昭和60年〜現在)
8、解釈してはいけない説(昭和60年〜現在)
9、全反射の双対現象として生じる外景の円形像説(平成16年)
ご興味のある方、上にサイトに詳しく載っているのでぜひご一読下さい。
子どもは光説・泡説を出すことが多いそうです。うちの子も光説を出してきましたし、それが一番自然なんだと思います。
私の記憶のプランクトン説は古いですね…。
他に気になるのは母親カニ説。
この話には、父親のカニしかでてきません。母親のカニが出てこないんです。
だから、母親カニだという話も納得できます。でも、子どもが母親の死をそんな風に語れるものだろうか。子どもにとって母親の死はもっと衝撃的なものだという意見もあるようで、それにも納得できます。
じゃあ、やっぱり、光や泡?
ここで、子どもは「ぼくは光だと思う!ママはプランクトンなの?」で終わっているのに、
私は後からいろんな説をネットで見て、なんだか一人で正解探しをしているようだな…と気付き、少し反省しました。
「答えがない」を楽しめている?
ネガティブ・ケイパビリティ~不確実さの中にいることができる?
ママン(id:mamannoshosai)さんが「ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability 負の能力もしくは陰性能力) 」について次の記事に書いてくださっています。
ネガティブ・ケイパビリティは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」だそうです。
すぐに証明や理由をみつけたくなっていることに気付いて反省しました。
国語のテストじゃないんだから…。
国語の物語文のテストの正解は
国語のテストは正解がはっきりしています。
テストでは何が正解かといえば、問題を作った人の解釈が正解。
でも、物語文の場合、人によって解釈が異なる部分がありますよね。
物語を作った本人でも、その物語文の問題を全問正解できないと言われているそうです。
だから、「読書好き・読書経験が多い=国語の成績がいい」ではないんだと思います。
問題を作った人の解釈がわかるようになるには
国語のテストは、問題文を作る人の感覚、つまり世間の多くの人が納得する常識的な解釈を手に入れる機会でもあります。
いくつも問題に取り組むと、だいたいのパターンがわかってくるので、国語の物語文のテストで点をとりたいなら問題をこなすのが一番だと思います。
国語のテスト問題を論理的に解く方法として、以前、「出口式」「福島式」を紹介した記事がありますが、
この記事を、みのたけ(id:apapoyo)さんが次の記事で取り上げてくださっていて、
この記事にも、物語は余白(解釈)を楽しむもので、物語文(小説・随筆)より説明文(評論文・論説文)の方がわかりやすいと書いてます。
「正解」から離れ解釈を楽しむのに最適な一冊
物語の解釈を楽しむにも、どう考えても正解はこれ!という物語もありますが、この「やまなし」は「クラムボン」をはじめ、謎の部分が多く、解釈を楽しめる物語です。
タイトルの「やまなし」、話に出てくる「イサド」、なぜ5月と11月なのか。
短い絵本なので、小さい子から大人まで楽しめると思います。
たまには、「正解」から離れ、自由な解釈で楽しまれてはいかがでしょうか。
新しい説が思い浮かんだ方はぜひ教えてください。
☟下のバナーをクリックしてくださると嬉しいです。
3つのカテゴリーに参加しています。
応援ありがとうございます!