2023年3月3日に公開されたドラえもんの映画に子どもと行ってきました。
※とても長く書いてしまったので、上の目次をクリックしてご興味のあるところからお読みください。
どんな映画か?テーマは?
あらすじ
ドラえもんとのび太たちは、桃源郷を探し空に浮かぶ誰もが完璧になれるという楽園を発見。そこで完璧なネコ型ロボットのソーニャと出会い、争いも憎しみもなく皆がルールを守って過ごす完璧な理想郷に感動する。しかし、楽園に隠された秘密を知ってしまって…。
ここまで読むとすぐに察しがつくと思いますが、テーマは金子みすゞの『みんなちがって、みんないい』のようなもの。ひとりひとり、欠点も含めたその人らしさがあるから楽しい世界なんだということに改めて気付かされる映画でした。そして、欠点も含めて愛して常にそばにいてくれる存在(のび太君にとってドラえもんのような存在)が大切だということも。
主題歌
主題歌のNiziU「Paradise」もそのテーマにそったもの。心に残っている歌詞の一部をあげてみます。
「しあわせは空。しあわせは今」
「あたりまえだけど奇跡」
「そのままで大好きさParadise」
「心のままで行こうParadise」
「悔しさに泣いたって手を差し伸べるから。ぼくはここにいるから」
平和な映画?戦闘シーンはない?
戦うシーンはあるけれど大丈夫
実は、前回の『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』が戦争もので、ある国の戦争を連想させるものだったので、今回も同様のものだったら見るのをやめておこうと思っていました。でも、今回は「理想郷」と書いているし、前々回の『ドラえもん のび太の新恐竜』に似た雰囲気。shimausj.hatenablog.com
ほのぼのした映画で戦闘シーンはないだろうと思い込んで行ってみたら、一部、ちょっぴりあって内心びっくり。でも、戦闘シーンといっても雷のような光線がでる棒で戦い、その光を浴びると虫になるというもの。しかも、ちゃんと元に戻る光線をあびると元に戻るんです。最後はめでたしめでたしで終わる平和な映画でした。
映画が始まる前の公開予定映画の予告・CMも怖いものがなかった!
ドラえもん映画でも、映画が始まる前の公開予定映画の宣伝のような時間に、以前はサイコホラー的なものや「鬼滅の刃」のような残虐なシーンがあるものが流れてきて、小さな子が見る映画なのに…という気分になっていましたが、今回はそういった怖い映画の予告・宣伝的ものがなく、あっさり始まりました。怖がりさんでも気分を損ねることなく最初から最後まで楽しめると思います。
『のび太と空の理想郷』の感想
ドラえもんなしでも頑張れた!
ハラハラドキドキシーンは、前回より控えめですがちゃんとあります。ラスボス的な存在(レイ博士という科学者。ユートピアを取り仕切る三賢人を操っていた)との戦闘時に先にドラえもんがテントウムシにされてしまい、ドラえもんだけ空に浮かぶ理想郷から落とされてしまいます。のび太は泣き叫び打ちひしがれて終わり…ではありません。静かに喪失感・絶望感を味わい、洗脳から目覚め自分の意志で立ち上がりラスボスと向き合うのび太の言葉に、ジャイアンたちも洗脳から目覚め、のび太君とその仲間だけでなんとか脱出。ドラえもんという支えを失っても頑張れるのび太にちょっと感動します。心の支えが常にそばにいなくても「心の支えがいた」経験が大事なんだと思わされました。
自分で考えて行動することの大切さ
壊れていくユートピア(理想郷)からのび太たちがユートピアの住民を脱出させる時、住民が「三賢人様に聞いてみないと」という言葉にのび太が「自分で考えて」と言うシーンがあります。他の仲間も無理やり住民を避難させるのではなく、牛を連れて行きたいというのであれば、牛も一緒に連れて行くという相手の心を尊重した導き方をしています。
それとは対照的なシーンがその前にあって…三賢人(三賢人の裏にいるレイ博士)が、命令を聞かないソーニャに「またガラクタに戻すぞ」と脅し無理やり言うことを聞かせようとしています。
保護者としてはなんでも相談して言うことを聞く子どもの方が楽ですし、学校の先生や上司だってお伺いをたてて言うことを聞いてくれる生徒や部下の方が楽ですが、「自分で考えて動く」ことができない人間にはなって欲しくないですし、脅して言うことをきかせるなんてことしたくないですね。
近ごろ、特に災害時にはマニュアル通りではなく、その場で自分で考えて柔軟に行動することが大切だとも言われています。
「できるだけ相手の心を尊重した導き方をする」「自分で考えて判断することができる」「自分の意志で動く」ことの大切さも読み取ることができる映画となっているなぁと気付きました。
↓映画の前にもらえる冊子の表紙とその裏です。のびのびしていて楽しそうですね!
個性を潰す?洗脳?躾・教育って何だろう
もともとのび太はどんなに叱られてもいつも宿題は後回し。のんびりしたい時にのんびりする。気持ちのままに生きています。これを自分の意志・気持ちが強いというとらえ方をして、ユートピアの教育も天才科学者が生み出した洗脳される光を浴びてものび太には効果が出ず、洗脳されにくい珍しいタイプとして扱われていました。
誰もが完璧になれるユートピアで教育を受けているのに、仲間はドンドン争わない理想的な穏やかな言動になり完璧になっていくのに、のび太ひとりだけなかなか完璧な人間になれないと。
これは奥が深いなぁと思わされました。
どんな優れた指導をしても、ほとんどの子には効果があっても、のび太のようにその指導や教育の効果が薄い子がいるものです。(昔はそのままでしたが、今はその効果が薄い子にピッタリ合う指導方法を探します)
また、一般的に親は大人たちが考える理想的な人物像になれるよう子どもを導くものですが、「子どもたちみんながその理想像になっていいのか?」とも問われているようで。
投げ出さず、自分をコントロールして時間管理もできる子…
その自分が考える理想的な人物像、人として生きやすいように教育してきた教育方針に対しても、疑問を呈されたようで「じゃあ、躾や教育って何だろう?」という気分になりました。
「投げ出さず、自分をコントロールして時間管理する」ことだって、元から指導しなくてもできる子もいて、それも個性。周りの迷惑を考えずに好きなことを好きなようにして過ごして、自分の考えや思いを人に押し付けて、どう指導してもルールを守れない人もいて、それも個性。とても難しいテーマに思えました。
有名な「さかなクン」のお母さんが、学校の先生の「授業にもっと集中してもらいたい」という指導に対して「みんながみんな同じように育ったらロボットみたいじゃないですか」と言っていたというのを聞いたことがあります。
そのままの子を大切に思う気持ちが大切。
個性を大切に、お互い尊重しあって自由に羽ばたける、この世の中がユートピア。素直にそう思える世界を作りたいですね。
また、独裁者が自分を崇め奉るように教育していくことが過去の歴史で多々ありましたが、それも教育という洗脳に染まらず、反逆する者がいて、世の中はかわってきました。ルールに従って生きていく生き方も、疑問を持って立ち向かい反逆者になる生き方もあって…。個人的には規範に従って生きて、自分以外の誰かが立ち向かって頑張って良い世の中にしてくれたら楽だなぁなんて思ってしまいますが、そういう様々な個性が人間という種類を長く残すには必要なんでしょうね。
それに、いろんな人がいた方が、いろんなことがおきて楽しい。理想的な世の中はつまらない。それを映画の中でもしっかり伝えてくれています。「ユートピア」にはいなかったタイプの「のび太とドラえもん」の掛け合いに「ソーニャ」は大笑いして、笑ったのは久しぶりだと気付きます。それをきっかけに「ユートピア」が最も優れた世界なのか疑問に思い始めます。
ロボットも自分の心・意志で行動
完璧なネコ型ロボット「ソーニャ」が命令に背く
完璧な世界に疑問を持ち始めた完璧なネコ型ロボット「ソーニャ」が、ユートピアを取り仕切っている3人の賢人(実はロボット)を操っていた悪い科学者であるレイ博士の命令を背き、自分の心のままに行動するところがあります。
「ソーニャ」は過去に失敗ばかりするガラクタとして捨てられていたのを三賢人様(レイ博士)に完璧なロボットにしてもらった恩があり、完璧なのがいいと思っていましたが、のび太たちの様子を見て考え方が変わったという設定になっています。
命令に忠実だったロボットが、心を持ち自分の意志で行動し背くなんて…いい心の持ち主だったから良かったですが、悪い心になったら怖い!なんて思ってしまいました。
人間で言うと、親から自立して親に反発し、自分の考えを持って巣立つ子どものような感じかな。
人に寄り添うために作られたネコ型ロボットは心を持つ!
また、ソーニャが「僕たちネコ型ロボットは心を持つ」と言っていて、ドラえもんやソーニャのようなネコ型ロボットは心を持つ設定になっていました。
本物の猫も犬と違って気まぐれで飼い主の思うように動いてくれないですし、ドラえもんやソーニャも時々思うように動いてくれないし、そういうところがネコらしくていいですね。
そういえば、ネコちゃんロボットが心を持つというので、思い出したのがガストのネコ型配膳ロボット。なでると「嬉しいニャー」と反応するそうですね。大抵の人がネコちゃんロボットには心を持たせたいのかもしれません。
お話の中で、「ネコ型ロボットは人間の心に寄り添うために作られた」と言っているところがありました。ロボットは危険な作業を代わりにしてくれるロボットだけでなく、人の心に寄り添うためのロボットって、もうありますよね。
まだまだ未発達ですが、次のようなオモチャもコミュケーションで癒してくれます。
次のロボットは会話の内容がだんだんアップデートされ、たくさん話しかけれると、歌のレベルも上がるそうです。
これが22世紀にはドラえもんやソーニャのように?!すごい!
今回の悪役について
なぜ悪い人になったのか?
最後に出てきた三賢者を操っていたラスボス的な存在、天才科学者レイ博士がなぜ犯罪を犯したのか、語るシーンがあります。天才科学者も子供の頃はのび太みたいな存在で、皆が自分をあざ笑い馬鹿にし、蔑まれ続けていたそうです。だから、みんなが自分の言いなりになる理想郷を作ったそう。
しずかちゃんが悪者に対して「かわいそうな人だったのね」というようなことを言うシーンがあり、確かに常にそばにいて心を支えてくれる人がいれば、馬鹿にする人たちがいなければ、悪者にならなかったのかもしれない。そう思わせてくれました。悪者は警察につかまり一件落着で終わりましたが、ソーニャは最後まで悪者の科学者の心に寄り添う設定にしておいて欲しかったです。ワンちゃんだったら、忠実に最後まで寄り添ってくれそうなのに…やっぱり気まぐれネコちゃんだから?
見た目は大事?
悪者のレイ博士は見た目も大事なのか、表立っていた三賢人は美しい人たちでしたが、裏にいた悪者は悪い魔女のような、年老いて醜い姿となっていました。これもできれば普通の見た目の人にしておいて欲しかったです。「悪い人=見た目が悪い人」というイメージがついてしまっているのが、なんだかイヤなので。生まれつきであったり、いろんな病気で見た目が特殊な人がいますし、普通の顔した悪い人が世の中にはたくさんいます。
昔から伝わる話が満載
桃源郷、竜宮城…三賢人から何から何まで昔から伝わる話を思い出させる要素がたくさんありました。「なんで【飛行船】にしたんだろう?」「ノアの箱舟のイメージじゃない?」など、ある程度いろんな物語を知っている子ども~大人までいろいろ語り合えるようになっていて、なかなか良かったです。
親子でドラえもん映画へ!
年齢層が高く空いている時間帯は朝一番
前回、前々回はかなり年齢層が低かったので、そろそろドラえもん映画も卒業かなと思っていたのですが、急に私の方が行きたくなり行ってきました。もう10歳なんですが、ドラえもん好きなので子どもも喜んでくれました。友達同士で来ている中学生か小6くらいの子どもたちもいて、今回はそれほど低年齢ではなかったです。たまたまかな?
マイナーな映画館でしかも時間帯が早かったからかガラガラ。いつもの低年齢層がゴチャーとしている感じ、「ギャー」とか「ワー」なんかがなくてちょっと寂しかったです。小さな子に椅子をけられたりちょっかいを出されることなく、快適といえば快適で見られましたが。
映画の良さって大勢で見ることもでもあるので、次からは人が多い時間帯に行くかもしれません。あまり混んでいると感染が心配ですが。
2023年『のび太と空の理想郷(ユートピア)』ポップコーンボックス
2023年のドラえもん映画のポップコーンバケツ(ボックス)はこれ!
場所によっては売り切れているというのに、マイナーな映画館のせいか、年齢層が高かったからか、ポップコーンバケツを買う子が他にいなくてこちらもちょっと寂しかったです。大勢でポップコーンボックスをぶら下げるとテンション上がるのに…。
過去の映画と比較して話せるようになった
『ドラえもん のび太の新恐竜』を見た直後は、次に書いたようにあまり感想を聞くことができませんでしたが、
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』の後から映画後からボチボチ感想を言い出すようになり、今では過去の映画と比較して話をすることができるようになりました。
子どもと映画の内容をテーマに話し合い
特に今回の映画に関して息子と話していたら道徳の授業のようになりました。
「悪者のレイ博士は警察に捕まったあと、きちんと更生して良いことにその能力を使えるといいね。のび太君のドラちゃんのように誰かが良いことに使うように導いてくれる人がいたらよかったのに」と言うと、「良いことに使えていたら良かったね。でも、レイ博士はもういい人になれないから、終身刑だよ。出てきたら、また悪いことに使うよ」と息子は単純に厳しいことを言う。
確かに、突然ユートピアへ誘拐され、洗脳された人々や家族の心労やその間の返ってこない時間を思うと許せない気持ちもわかります。北朝鮮の拉致問題の件と、重なるところがあるのかもしれない。でも、映画の方は短期間で全員無傷(ロボット以外)。命を奪われたわけではないですし、反省して完全に更生してくれたら…と私は思ってしまうのですが。親になると、親の立場でいろいろ考えてしまいます。例えば、自分の子どもがレイ博士だったら?のび太君だったらドラえもんがいますが、レイ博士には味方がいなかったのかもしれない。誰にも愛されたことがなかったのかもしれない。ずっと否定され続けて上手くいかない人生だったのかもしれない。
息子からは「だからといって、他の人を洗脳していいわけない」とビシッと返されました。本当にそうですね。私も若い時は竹を割ったような性格で迷ったり悩んだりすることはなかったのですが…歳を重ね、経験を重ねれば重ねるほど、複雑な気持ちを抱え、迷うことが増えていくような気がします。悪い人も、ある意味不幸。ある個性を抱えて産まれ、不幸になり、そういう運命をたどってしまった気がします。ダメなものはダメですが。
「レイ博士のようにならないようにするにはどうしたらいいと思うか?」と話し合ってみると
①人にばかにされる行動をとらない。
②馬鹿にされ、蔑まれても気にしない。
③人を馬鹿にしたり見下さない。
④ドラえもんのような人を探す。(親でも可)
というような結論に。
他にも「もし、自分がのび太君の立ち場だったらどうする?簡単な足し算ものび太君は難しい大学の勉強のように感じているのかもしれない。」とふってみると、「少しずつ勉強する」と返ってきて、「何からどう勉強していいのかわからない状態なのかもしれない。のび太君のお母さんは宿題をしないことやテストの点数ですごーく怒るけれど、のび太君に勉強を教えている姿を見たことないよね」と言うと、「お母さんもダメだよね。でも、ドラえもんがいるから大丈夫と思っているのかも。ドラえもんは友達だから、教えてくれるはずないのにね」という話に。そうか、ドラえもんは家庭教師機能がなかったのか…。
マクドナルドのハッピーセットもドラえもん映画と連動!
ハッピーセットがドラえもん映画と連動している第二弾の時期だったので、次の3種類のおもちゃを手に入れました~。
息子によるとタケコプターのおもちゃだけシール付きだったそうです。
本体だけだと『のび太と空の理想郷』っぽくないからかな?タケコプターは映画と関係ないように見えますが、関係のあるんです!みんなが爆発に巻き込まないようにソーニャがタケコプターを撃ち抜いて落とすシーンがあり、それを思い出させてくれます。
でも、子どもたちは他のものの方が映画用に作られた感じがしていいんでしょうね。
全種類もらえる可能性があるのは3/31からです。
私「もう小さい子のおもちゃだから要らないよね?その分で別のものを買った方が…」
夫「やっぱりいるよね?」
子ども「要らないと言えば要らないけど、もらえると嬉しい」
ということで、購入しました。
ドラえもんのおもちゃのビニール袋にスマホをかざすとどこでも「ドアが出現するどこでもAR」も気になっていたので。
部屋の中にどこでもドアがあるように映り、どこでもドアのドアノブをタップするとドアが開いてソーニャとドラえもんが現れます。未来の世界で仲良くしてくれているみたいで嬉しいですね!
未来といえば…来年のドラえもん映画は音楽関係のようです。息子は楽器好きだから、また連れてきたくなるかもしれません。
今回の映画は「個性を大切にお互い尊重して自由に羽ばたこう」というテーマのように思えましたが、次の映画のテーマはどういったものでしょうか。ちょっと楽しみです。
※映画のタイトルの「理想郷」部分を「桃源郷」と入力ミスをしてしまっていたので、修正しました。(2023/5/8最終更新)
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